地方都市における広報紙刷新とデジタル連携による情報発信改革
人口50万人規模の地方都市では、市政情報を市民に届ける手段として広報紙(市報)や各種案内チラシを作成し、全世帯に配布してきた。しかし近年、財政緊縮や住民の多様化により情報発信の在り方を見直す必要が生じていた。市報の発行コストは年間数千万円に上り、その割に若年層には届いていないとの指摘があり、一方で高齢者やデジタルデバイド層には引き続き紙の情報が欠かせないというジレンマがあった。さらに各部署が個別に住民向けチラシを印刷・配布しており、内容が重複したりタイミングがばらばらだったりする非効率も問題化していた。
市役所内部では、広報課と情報政策課の間で方針が食い違っていた。広報課は「全戸配布の広報紙は行政サービスの基本。簡単には廃止できない」と主張し、紙媒体の存続を訴えた。一方、情報政策課は「スマホアプリやウェブでの情報提供に切り替えるべきだ。紙はコスト高で時代遅れ」と反論し、市公式アプリやSNSの拡充に予算を振り向けようとした。この対立は市幹部会議でも平行線を辿り、若手職員からは「広報紙はPDFでオンライン配布すればいい」という極論も出る一方、ベテランからは「アプリなど高齢者は見ない」と反発が出るなど、組織内世代間ギャップも浮き彫りになった。
地方都市は課題解決のため、行政分野での実績もある文唱堂印刷にコンサルティングと実務支援を要請した。文唱堂のチームはまず、全庁的な情報発信の現状をヒアリング。広報課・情報政策課・各事業課の担当者を集めワークショップ形式で問題点を共有した。その結果、「全戸配布の広報紙は続けつつ、内容の統廃合とデジタル連携を進める」という方向性で合意形成がなされた。
文唱堂が地方都市の広報物をすべて収集・分析し、問題点をレポート化。これを基に市側と新方針を策定した。
文唱堂編集デザインチームが新しい市報の試作版を制作。市長メッセージや特集記事、各課からの重要なお知らせを盛り込んだ構成にし、市民モニター10名に試読してもらい意見を反映。
文唱堂物流センターで、市報と必要な折込チラシを封入し郵送する仕組みを設計。市内をエリア分けし、郵送と自治会経由配布を最適に組み合わせる計画を立てた。
市公式ウェブサイトの広報ページ改良やアプリ通知機能の設定を、市情報政策課と文唱堂ITスタッフが協力して実施。
リニューアル後初の市報発行を文唱堂立ち会いのもと実施。全戸配布を完了させ、その後市民アンケートで新広報紙の評価を調査。
広報関連の年間コストは統合効果で約15%削減できた。特に郵送費・印刷費の重複部分が解消され、予定していた予算削減目標を達成した。
新しい市報は従来より読みやすいと好評で、市民アンケートで「内容に満足」した人が80%に増加(以前は60%)。
各部署が個別配布をやめたことで、職員が印刷発注や配布調整に費やす時間が大幅に減った。
再生紙利用と配布部数削減により、年間で約5トンの紙資源節約となった。SDGs未来都市の一施策として、この成果は市の環境報告書にも掲載され、高く評価された。
自治体の抱えるジレンマを解消し、持続可能で効率的な市民広報のモデルを構築